加州ノイズ眺望 @ L.A. Noisescape

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ロサンジェルス、と言うよりはカリフォルニア州のノイズ・アーティストの演奏を集めた
コンピレーション CD が 2006 年に Basterdised から出版されている。
全 36 トラックを収録した、サンプラー的 CD と言えようか。
ライヴ・トラックが殆どの様なので、ドキュメンタリーとしての色合いが濃いかも知れない。
いずれにせよ、素っ気無い音源の羅列と呼ぶのは相応しくない様だ。
余りにも濃く、熱い。

CD トップを飾る Andorkappen とは、版元のオーナーであるサンドール・フィンタの別名の様だ。
彼は 2005 年にダミオン・ロメロの P-Tapes が出版したリック・ポッツの 3 インチ CD-R、
"Carousel Of Progress" の録音を担当していた人物である。
従って、ロサンジェルス・フリー・ミュージック・ソサエティ (LAFMS) とまんざら関係が無い訳ではない。
そんな交流の証なのだろうか、リック・ポッツがこのコンピレーション CD に参加している。
他にも、注目すべき人々の名を認めることができる。

カリフォルニア・ノイズの重鎮でもある、前述 P-Tapes のダミオン・ロメロ。
最近注目される局面が多いレーベル、Melon Expander を主宰するミッチェル・ブラウン。
彼は、演奏する側としても実に非凡な才能を持っている。
これらレーベル間の関係にも興味深いものが少なからずあって、
P-Tapes はミッチェル・ブラウンの 3 インチ CD-R (別項 『大根の夢踊り』 参照) を出版している。
このレーベルはジョセフ・ハマーの作品を出版している点からも、LAFMS ファンに注目されているだろう。
Melon Expander もジョセフ・ハマーの作品を出版していて、さらにダイナソー・ウィズ・ホーンズ (ジョセフ + リック)、
ソリッド・アイ (ジョセフ + リック + スティーヴ・トムセン) の作品もカタログに備えているのだ。

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他の参加アーティストも、カリフォルニア地下音楽を知る際に興味深い方々が揃い踏む。
例えば、AMK。
彼は元カセット・レーベルであり、最近ではやはりジョセフのソロ作品を含む好盤を
3 インチ CD-R のフォーマットで連発する Banned Production をサン・フランシスコにおいて主宰する。

そして Helicopter を主宰し、シシー・スペイクスなどで多岐にわたり活動する
ジョン・ウィーズ (別項 『カリフォルニアを映す斧』 を参照されたい)。

来日経験もあるヘイターズこと、サン・フランシスコの G.X.ジュピター-ラーセン。
彼は、サヴァイヴァル・リサーチ・ラボラトリーズのマーク・ポーリンのコラボレイターでもある。

そしてザ・チェリー・ポイントは、Troniks を主宰するフィル・ブランケンシップのユニット。
Tronoks は、米国の興味深い音楽を多岐にわたり出版するレーベルだ。
ミッチェル・ブラウンの各々が感触の随分異なるソロ DC-R 作品も、二種出版している
(別項 『もう一人の MB』 を参照されたい)。

ディヴィッド・ケンドール、アルバート・オルテガなども良く耳にするロサンジェルスの作家だ。
彼等の作品も、P-Tapes などが出版している。

さて、"L.A. Noisescape" のポジションはどこに在るのだろうと考えてみた。
それは、1970 年代から後の様々な時点に起始するカリフォルニア・アンダーグラウンドに対する
「或る角度からの総括」 なのかも知れない。
「或る角度」 ゆえの限界もあるし、それゆえにユニークさもある。

まず 『ノイズ』 を標榜するのはそう言うことかと納得するくらいに、
最初ハーシュ・ノイズのトラックが続く。
8 トラック目アルバート・オルテガの "Owis" 辺りからようやく 「ホッ」 とする展開となり、
リック・ポッツのトラックに至ればかなりゆったりと音の動きを楽しむことができる。
ダミオン・ロメロも渋めながら、流石の騒音塊制御力を見せてくれる。
彼等の演奏には、年季と言うよりも特異な感性が満ちている。

これとは別のベクトルを持つ、特異な感性もある。
真っ向からハーシュで勝負する、ジョン・ウィーズとザ・チェリー・ポイントがそうだ。
彼等は、轟音の中にさえ独特の透明な感触を提示する。
だから、この暑い季節でも充分に楽しむことができる音の切れを聴かせてくれる。

そして、ミッチェル・ブラウンのトラックと来たら極め付けにサイコティック !
異彩を放つと言うよりも、むしろ安定をさえ感じさせる重みさえが在る。
ますます注目せざるを得ないと、深く感じ入る演奏だ。
レティカ・カスタネダとピーター・ラグロッソのデュオも、顕かにハーシュから逸脱している。

全 36 トラックから成るこのコンピレーションのトレンドは、やっぱりハーシュだ。
ハーシュと相容れる別種の音として、LAFMS 後の様々なノイズが収められているのだろうか。
2005 年に Fish Pies と Resipiscent が共同出版した 2CD "String of Artifacts" と併せ本作を聴くと、
より現在のカリフォルニア・アンダーグラウンドで活動する人々のことを知ることができるかも知れないとも思う。
また 2006 年にはカリフォリニア州の Troniks と Ground Fault Recordings、
そしてマサチューセッッツ州の RRRecords が共同出版した 10 LP "California"。
高価なので未だ購入していないが、"Califrnia" には、20 のアーティストが参加している。
ソリッド・アイ、ダミオン・ロメロ、ジョン・ウィーズ、G.X.ジュピター-ラーセンなども参加しているから
"L.A. Noisescape" と "String of Artifacts" と "California" には共通する部分が確かにあるのだが。

こうして振り返ると、2005-6 年辺りにカリフォルニア・アンダーグラウンドを総括しようとする
そんな動きが在ったのかなと思えて来る。
尤も、これらの出版に収録されなかった人々が多く居ることも事実だ。
アンダーグラウンドの音楽活動は余りにも多様なものとなっているし、全体を把握することは難しい。
その情況については、日本とも共通する部分が多いと思う。
カリフォルニアにおいて生まれたノイズ創生者達にも、年月を注ぎ創造を継続している人々が少なからず居る。
その辺りの顛末は、日本の情況を参照するととても面白く思えて来る。
「あの時代」 に音楽を始めた人々は世代交代などどこ吹く風、まだ続けているしずっと継続する。

そこが大事なのじゃないかと、かなり前から思っている。

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