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zoom RSS VELTZ / [ In Dust, Real Dream ]

<<   作成日時 : 2015/02/25 11:00   >>

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このCD-Rは、在京の音楽家である松岡亮さんがVELTZの名のもとに制作されたもので、
2011年に録音された4つのトラックを収めている。

*

Broken TV –summer 2011-

蝉の声から始まるこのトラックは、アトモスフィアが語る様に盛夏の音楽であろう。
2011年夏、地上波によるテレヴィジョン放送は完全にディジタルへと移行した。
結果として、アナログ波のみを受信する機器はその殆どが廃棄されて行く。

トラックは蝉に始まり蝉に終わる。
その間を徘徊するノイズは、おそらく電波を受信しないテレヴィが発信する様々なノイズなのであろう。
受信機としての役割を終えて、テレヴィはやむを得ず、自身が信号を発する方へと立場を変える。
「廃棄され行くアナログ・テレヴィが、かつての栄光を夢視ているようなイメージ」を描こうとしたのだと言う。
シグナルを受信していた際には、その背景にマスキングされていたテレヴィ固有のエネルギー。
そんなものが、まるで受信を行なっているのかの様に錯覚し蠢くテレヴィから放射されているかの様だ。

同年の秋にあちこちに廃棄されたアナログ受信機を収集し、それらを用いたインスタレーションを行なっている。
それは”DEDICATE TO ANALOG TELEVISION”と題されており、
その様子を冷泉さんが撮影された写真をジャケット内側に掲載した。

最早受信すべき電波の無い情況でテレヴィが放射するのは、さながら情念波の様だ。
その情念を突き動かすものは最初、以前テレヴィが視ていた夢 –
かつて自身がブラウン管に映し出したシークエンスの記憶なのかも知れない。

なお松岡さんは VELTZ の名の下に CD-R [DEDICATED TO TELEVISION] を 2009年に発表している。

この作品は放映終了後のテレヴィから流れるノイズを用いたものだ。
そのノイズにホワイト・ノイズ波形を持つモジュールを重畳させトラックを完成させたと言う。

即ち、電波を受信するという業務から解放された、テレヴィ固有のエネルギーを基盤とする作品だと言えよう。
翌年にはその続編に相当するテレヴィ放送終了後流されるテスト・トーン・サウンドのみを収めた CD-R
[DEDICATED TO TV Part 2] を発表した。
テレヴィが受信すべきシグナルの無い段階に移行し本来の姿に戻るプロセスを反映するものなのかも知れない。
最早アナログ放送が消滅したとしても、ホワイト・ノイズ発信機としてのテレヴィは不動である。
これらは、そのことを確認させてくれる作品なのではないかなと妄想させて頂いた。

*

BATTLESHIP ON THE BOTTOM OF THE COLD SEA

テレヴィ固有のエネルギーを聴いているリスナーは、
いつもその波動と共振する訳では無いだろう。
テレヴィの波動と自分の波動はシンクロナイゼーションを見せる時もあれば、
そうでは無い場合もあると想うのだ。
このトラックはテレヴィのエナルギーを音源とするものでは無いにせよ、
そうした音とリスナーの相関を産み得るものである様に想う。
様々な音が重畳された重厚なドローンであるが、
音と意識がシンクロした時、私は荘厳なコーラスを感知してしまった。

松岡さん曰く、「冷たい海に沈んだ戦艦。そして、戦闘機などもが視ている夢を描写しています」 とのお話だ。
アナログ・テレヴィと同じく、機能を喪失した器物が視る夢は自身が活躍していた時の記憶を含むだろう。
だが、器物として自身が保有する本来の記憶が、やがて蘇生して来るかも知れない。

*

NOCTURNAL PALADE OF METALS

「夜な夜な群れで歩く金属の行進のイメージ」 を表現したトラックだと、松岡さんは言う。
こうした金属ノイズは、英国のザ・ニュー・ブロッケイダーズの作品に在るものを想起させるだろう。
だが VELTZ の金属ノイズには急き立てる様な感触は無く、
寧ろただただ進みゆく現象のすぐそばでそれを実体験している様な趣を持つ。
やはり英国のオーガナムによる軋みで満ちた傑作 “Tower of Silence” と比べてみても、
リスナーに用意された立ち位置は違う様に想う。
音のひとつひとつにはただならぬアタックが在るが、瞬間的衝撃の連続に依存し成立する音楽では無いだろう。
寧ろやむを得ず奏でられている軋轢を自然の理として受容する、そんな音楽なのかも知れない。

*

In Dust, Real Dream - live at yamamura salon -

2011年の4月29日に兵庫県芦屋市の山村サロンで催された、
『BENEFIT 2011 – 東北大震災復興支援 阪神淡路大震災復興支援 チャリティ・コンサート』 でのライヴ録音。
コンサートはそれまで『阪神淡路大震災復興支援チャリティ・コンサート』 として催して来たが、
2年間の休会後再開の準備をしていた時に東日本大震災が起きた。
コンサートの趣旨を知った松岡さんは東京から参加を表明され、その日行われた演奏の記録が本トラックである。

山村サロンの円藤正吾さんがカセット・レコーダーで録音された音源を元に、
松岡さんがマスタリングを施された。
軋みとピアノとドローン、そして金属など様々なものから発生する打楽音。
それらから構成されるものは、やるせなさと慈しみで充満するレクイエムであろう。
VELTZの音楽に無機的な感触を抱かれる方がおられるかも知れないが、
それをこの音楽は見事に破砕してくれる。
あるいは、本来VELTZの根底には、こんな想いが満ちているのだろうとの妄想を抱いてしまった。
物質への執着を表層に想起させる、松岡さんの作品群。
だが、このトラックを聴くと、彼が居る本来の場所が推察される、そんな名演でもある。
終演後の拍手でようやく 「ハッ」 と我に返り、呆気にとられてしまう。

*

松岡さんは、1974年青森県生まれ。
自身の作品をプロデュースし出版を行う機関VLZ PRODUKTを、2008年に興す。
VLZ PRODUKTはその後、有名と無名を問わず独自の審美眼に基づき、
VELTZ以外の国内外作家による作品を出版して来た。

VELTZとして2013年には、OMEGA POINT からCD 『アナログテレビに捧ぐ』 を発表している。
このアルバムには、4つの楽章から成るタイトル・トラック、カセット・テープレコーダーに捧ぐトラック、
2部から成るビデオ・テープレコーダーに捧ぐトラック、
そして6枚の鉄板を用いたラ・モンテ・ヤングに捧ぐトラックが収録された。
素晴らしいアルバムであり、併せて体験されることをお薦めする。

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