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zoom RSS 小城仁志さんの音楽

<<   作成日時 : 2014/11/11 11:00   >>

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拙レーベル NEUREC から、ベルギーに在住する小城仁志さんのご作品を出版させて頂く次第となった。
小城さんは鹿児島県のご出身であり、若い頃には関東に滞在されていた時期があった様だ。
その頃には特異な作家として注目される瘡原亘さんとのコラボレーションを多々行なっておられたとも言う。
小城さんと瘡原さん、そこにマウリツィオ・ビアンキが参加したアルバムなんて面白いものも現存する。

ともあれ、今般出版させて頂く作品は元々小城さんの自主レーベルからも出版されたものだ。
そうではあっても、その日本ヴァージョンを出版させて頂くのは自分にしてみればとても嬉しい。
と言うのも、私自身小城さんの音楽を拝聴して救われた様に想ったことが幾度かあるからなのだ。
それを 「おすそ分け出来ればなぁ」 というのが出版の動機だと想って貰えればこれ程幸いなことは無い。

今般に主版する作品については、下記リンクを見て頂くとにおいて小城さんご自身が説明を施されている。
http://www.omnimemento.com/kojo/neurec.html

それで充分なのかも知れないが、この記事においてそれに補足を行なって行きたい。
なお日本ヴァージョンについては、一旦 12 月 21 日に発売という形をとった。
しかし諸々の事情から出版が遅れてしまい、申し訳なく想っている。

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Hitoshi Kojo こじょうひとし / Lux Ova(星気卵)

○ 小城さんによる解説

 私は 80 年代半ばから音楽を作り始めたのですが、
 初めの 10 年はいわゆるバンド活動、もしくはそのメンバーに渡すデモの宅録を中心に行っていました。
 それとは別に、同時期から絵画やコラージュ制作を初め、
 その後、東京芸術大学油画科在学中にサウンドインスタレーションを手がけるようになります。

 90 年代半ばにバンド活動を停止し、様々な音響実験を一人で始めますが、その内容はかなり多義にわたり、
 発表を前提に行った実験ではなかったので、後に編纂するのにかなりの時間がかかります。

 その中から、アクショニズムやオカルトの影響の強いものを纏めたものを、
 1998 年に初のソロアルバム「胙+燐(すべての胎腔を光で充たすために)」として発表、
 フィールドレコーディングを多用したコンポジションを
 2002 年にスピラクル名義で 「Sympathetic Field(卵景)」 として発表します。
 この二つのアルバムに収録されなかった録音のうち、現在の活動に直接繋がる傾向のものを集め、
 2009 年から 10 年にかけて再編集したものが 「Lux Ova(星気卵)」 です。

 上記の二つのアルバムと違い、音の素材やコンセプトに統一性は無く、
 見つけたものを手当たり次第使っているのですが、10年以上経って聞いてみた所、
 むしろ開放的に音づくりを楽しんでいるように感じられたので、発表する事にしました。
 2014年の NEUREC からの再発版は、全6曲中4曲が別バージョンになります。

○ 私の感想

 最初にこのアルバムのオリジナル版を拝聴した時、何か救われた感触を覚えてしまった。

 私はオカルティズムに精通している訳では無いし、アクショニズムに詳しくも無い。
 そうした 「イズム」 には、明確にある種の力を表出させるストラテジーが在る筈だ。

 だが導き出そうとしている力の種を問わない、そんなエネルギーでこのアルバムは満ちている。
 このアルバムのおりじなる版を聴いて私がまず感じたのは、とてもストレートな祈りの感触だった。
 それは不要なストイックさを伴う祈りでは無く、多幸の果てに自身が消滅しながら放つ祈りかも知れない。
 小城さんのこの祈りは彼の関与したどのユニットの根底にも息づいていると、私は想っている。
 それは、生きるためのパワーそのものだと言って差支えは無いとも想うのだ。

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Kodama(谺) - Phxa(孵沙)

○ 小城さんによる解説

 Kodama の相方、Michael Northam (マイケル・ノーザム) の活動を知ったのは、
 上記の 「Sympathetic Field」 をリリースした際、似たような事をしているアーティストとして、某レコード店から、
 彼と John Grzinich (ジョン・グリズニッチ) の共作 「The Stomach of the Sky」 (1997) を
 紹介してもらったのがきっかけです。

 渡欧のきっかけとして
 ヨーロッパを活動の拠点としているアーティストにコンタクトを取り始めた時期だった事もあり、
 すぐにメールを書いて交流が始まりました。

 アクショニズムの影響を受けながら、
 一見受動的なフィールドレコーディングを通してのリスニングやメディテーションが、
 いかにパワフルで能動的なアクションであるかという点に気がつき、
 それを実践しているという点で強い共感を得て、2004 年の渡欧をきっかけに共同制作が始まります。

 A1 「Arcaea(始源菌)」 は、2009 年に秋に、
 フランス、リモージュのアーティスト・イン・レジデンスに滞在した際の
 レーコーディングセッションから取ったものですが、
 この期間の録音はほぼ未発表のままなので、いずれ機会を作りたいと思っています。

 A2 「Photon (光子)」 は、2006年のベルギー、リエージュでのコンサートの一部を編集したもの、
 B1 「Phxa (孵沙)」 は同時期に滞在していたアーティスト・イン・レジデンス
 Bains::Connective (バン・コネクティブ) で行った、同名の演劇的なパフォーマンスのドキュメントです。
 同パフォーマンスのビデオドキュメントがこちらです。
 https://www.youtube.com/watch?v=xCLCuGvX_d8
 このような公の場での活動の他に、全くプライベートに行ったレコーディングを編纂したものが、
 2009 年に Olde English Spelling Bee よりリリースされたアルバム 「Turning Leaf Migrations」 です。

 Michael は 2013 年初頭に故国アメリカの西海岸に戻り、
 現在はむしろ精神世界/内的体験の探求に集中しているようです。

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Juppala Kaapio(ユッパラ・カーッピオー)- Landing Clouds(雲の漂着)

○ 小城さんによる解説

 Juppala Kaapio の相方キャロル・コジョウ=ツヴァイフェルとは、
 上記の 2006 年のベルギーへの滞在中に出会いました。

 当時彼女は、アメリカ人フォークシンガー 「イン・ガワン・リング (In Gowan Ring)」 のツアーに
 ビオラ奏者/バックコーラスとして参加していたのですが、
 マイケルが 「イン・ガワン・リング」 と古くからの友人である事から、ジョイントコンサートを行い、
 それがきっかけで音楽を共に作り始めました。

 2007 年にカナダ、2008 年にモンゴルに共に滞在した後、
 キャロルの故国スイスで結婚、2011年にベルギーに移住して落ち着く訳ですが、
 2010 年から発表した 8 枚のアルバムには、そのノマディックな生活の変遷が色濃く反映していると思います。

 「Juppala Kaapio」 を無理矢理日本語にすると 「オットット・コビト」 となりますが、
 Kaapio というのはフィンランド語で大地の精霊の小人を表す言葉です。

 16 世紀のスイスの錬金術師パラケルススが記述した四精霊のうち 「ノーム」 として知られるものです。

 Juppala Kaapio の音楽は、スポンタネアスに生まれてきたものなのですが、
 この名前のせいか、アルバムを編纂していく過程で、
 自ずと Kaapio と私達の交流の記録というミソポエイックなものと成って行きました。

 私達は二人とも野山や森を歩くの好きで、その最中に演奏や録音もしばしば行っているので、
 その影響もあるかと思われます。
 本アルバム 「Landing Clouds」 は、ベルギー移住後の録音を編纂した初のアルバムになります。

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My Cat Is An Alien & Juppala Kaapio (マイ・キャット・イズ・アン・エイリアン&ユッパラ・カーッピオー)
- Black Blossom(黒きほころび)

○ 小城さんによる解説

 マイ・キャット・イズ・アン・エイリアンはイタリア、トリノのオパリオ兄弟によるスペース・インプロデュオで、
 90年代末より100タイトルを超えるレコーディングをリリースしています。

 彼らとの出会いもKodamaのマイケルを通してのもので、私とマイケルがスイスに滞在していた際、
 一緒にコンサートを行った事があります。

 後にユッパラ・カーッピオーを始めた際、それ依然の私のリスナーの多くが去っていったのですが、
 彼らはむしろその展開を好意的に受け止め、コラボレーションを申し出てくれました。

 まず私達の録音を彼らに渡し、それに彼らが一発取りで音を重ねたものがA面の二曲、
 彼らの一発取りレコーディングに私達が多重録音したものがB面で、最終的な編集は私が手がけています。

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○ 小城さんによる総評

 私の仕事はエクスペリメンタルミュージックとして受け止められる事が多いのですが、
 これら4タイトルに共通しているのは、おそらく一般的にエクスペリメンタルミュージックと呼ばれるよりも、
 かなりクラシカルな意味で音楽的に構成されているのではないかと思います。

 私の興味の比重は、あくまで音楽よりも音そのものに強く置かれています。

 とはいえ、物音や音響現象を音楽/音響作品として提示する事よりも、
 むしろ音楽、楽器、声を既存の文化的なコンテキストとは関係ない音の共振現象へ還元し、
 そこから再度何を編み上げる事が出来るかという実験に魅入られているのです。

 私はよく音を編むと表現するのですが、何かしら構築の意思が反映しているという点で、
 私が作っているものは音楽と呼ばれ得るものでしょうし、
 上記のような意味で、私の音楽は、少なくとも私にとってはエクスペリメンタルなものだと言えるでしょう。

 もっとも、実験そのものに制作のモチベーションがある訳ではありませんし、
 インスピレーションも様々な方向からやって来ます。

 とはいえ、それらについて語りだすと切りがありませんし、
 だいたいの方向性は、各タイトルに示唆されているので、
 聴く人それぞれに感じて想像していただければ良いのではないかと今の所は考えています。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
小城本人です。ご紹介頂きありがとうございます。
出身地なのですが、出生地という意味ですと茨城県なんです。鹿児島県は本籍地ですが、四年程しか住んだ事がありません。
よって、鹿児島県と私の音楽のイメージを結びつけてしまうと、誤解が生じてしまうかもしれませんが、屋久島には大きな影響を受けているので、関係が無いとは言い切れません。
東京にも十年以上住んでいましたし、もう、出身地=日本で良いのではないかと。。。
koz
2014/12/02 21:43
小城です。 デジタル機材を本格的に使い始めた90年代半ばに、この「磁気の揺れ」については随分と考えさせられました。
このデジタル機器で録音した時の物足りなさは、一体なんなのかと。。。
そして、アナログ機材を使わずとも、同様の質感は出せるのはないかと思い、様々な試みを始めました。
それによって「音/空間の質感」に非常に敏感になったと思います。
その後の録音は、その感覚を常に抱きながら作っているので、インスタレーションのための音源や、いくつかのコラボレーションを除くすべての作品が、坂口さんおっしゃる「こうした情報を<応用した>音楽」に該当するのではないかと思います。
「情報を応用する」という程分析的に取り組んだ訳ではないのですが、自ずとそれが私の音楽の中の重要な要素に成って行ったのです。
今回再発して頂いた「Lux Ova」は、元々90年代に録音したもので、そのような感覚に敏感になり始めた頃の録音のコンピレーションです。
他の三タイトルは近年の作品ですが、同様の質感がより自然な形で現われているのではないかと思います。
koz
2014/12/06 09:08

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