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zoom RSS パサディナとポートランドの魔術 @ The Rodney Forest

<<   作成日時 : 2011/04/21 15:00   >>

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この CD-R は、好作品であるにも関わらず入手が困難だったアルバムを再発したものとなる。
Los Angeles Free Music Society (LAFMS) の脈においては、スメグマ系列に属しているだろう。
それにしても、ユルい寄合いである LAFMS には柔軟に協働する面白いユニットが存在するものだ。
シャッフル・ユニットの様なポジションに在りながら、無比の存在感を感じさせてくれるのだから面白い。
そこには、他の組み合わせでは絶対に創生されないだろう選択的な化学反応をさえ実感することが出来る。
例えば、ザ・ロドニー・フォレストと言う名のトリオは或る側面においてスメグマの系列に在ることは顕かだ。
でも、決してその系列に収まり切ることの無い独特の蠢きを呈する音楽を演奏する点が彼ららしいのだ。
各々が独特の美学を装備する創造者でありながら、協働相手に反応して変化することを厭わない。
自身のアイデンティテイにとらわれないその様も、彼らならではのユルさと解釈して良いのだろう。

さて、このアルバムの主である自由で魅惑的なトリオ 『ザ・ロドニー・フォレスト』 に話を絞り込もう。
トリオの構成員は、まずジュ・スク・リート・ミートおよびオブリヴィアことロックンロール・ジャッキー・スチュワート。
彼らは LAFMS の中でもアウトサイダー・アートの趣きが最も顕著なユニット、スメグマの中核メンバーだ。
共に 1970 年代から活動し、ジュ・スクは 1973 年にスメグマを結成したオリジナル・メンバーのひとり。
スメグマはカリフォルニア州パサディナで発生したが、1975 年にオレゴン州ポートランドに移住する。
そして 1980 年代前半、それまで別ユニットで活動していたジャッキーがスメグマに参加するのだ。
その後四半世紀超の間、彼らと Dr. id ことマイク・ラストラがスメグマの音楽的中心を成していた。
2006 年に彼らは、毎年ニューヨークで開催されていた No Fun Festival にも登場する。
だが、その後間も無くして Dr. id がスメグマを去るという大きな変化が起こった。

その結果、ジュ・スクとジャッキーがスメグマの核を成すに至る。
彼らはそれまでと同様に、ポートランドへの居住を止めはしなかった。
同時に、スメグマの原点であるパサディナとのコネクションを重視し始める。
Dr. id 脱退の直前から、スメグマには LAFMS のトム・レッシオンが参加していた。
但しヴィクター・スパークスと言う変名を用いていたもので、その特定は困難だったのだが。
トムの参加は、スメグマにとって 1970 年代パサディナ時代への帰還を少し想起させた。
ジュ・スクにとってトムは、1972 年からの大きな音楽的影響の源だったのだから。
1975 年にトムはスメグマに参加した経験もあるが、正式メンバーでは無かった。

かつてパサディナで発生したが、その後 32 年間に渡りポートランドを拠点とし活動したスメグマ。
面白いことに、Dr. id 脱退後パサディナ時代に正規メンバーであった方々が再びスメグマに参集を始める。
それが 、LAFMS で活動を継続していたエース・ファレン・フォードとデニス・ダック・マハーフィだった。
さらには、初期から 1990 年前後にかけて重要なメンバーであったビッグ・ダーティが復帰を果たす。
こうして、ポートランドとパサディナ各々の在住者の混合ユニットたるスメグマが現代に成立する。
言わば、2008 年にスタートした新生スメグマは時代をシャッフルした様な趣きを携えていた。
時間と空間を超えて為された集合が原点への帰還を含有していた事実は、ちょっと面白い。

さて、温故知新の風情を持つ新生スメグマが成立した直後にもう一つの変化が起こった。
2008 年、ジュ・スクとジャッキーがザ・テンセズの名でライヴ活動を各地で展開し始めたのだ。
彼らは 1980 年代からデュオとして協働していたが、公的な場でそれを披露することは無かった。
ただ、彼らは並行して Dr. id 脱退前からも積極的に外部の音楽家との協働を始めてもいたのである。
例えば、サンフランシスコで活動するシャーキフェイスとローチフィレそれにシックセズとの協働を行っている。
このクインテットによる奇妙な演奏は、後に "Dr. Octopus" と題された LP (2005 年) に収められ出版された。

さらに、彼らの中シャーキフェイスとローチフィレとの協働はその後も継続することとなる。
2006 年のクリスマス直前に、ロサンジェルスにおいてベネフィット・コンサートが開催された。
主催は、The Society for the Activation of Social Space through Art and Sound (SASSAS)。
些か長い組織の名称を邦訳するならば、『芸術と音楽を通じ社会の活性化を目指す団体』 と成る。
SASSAS はロサンジェルスとその周辺の芸術活性化に務め、独創的的音楽の紹介に積極的な組織だ。
LAFMS の創始者であるジョー・ポッツが運営に参加し、トム・レッシオンも顧問として協力を果たしている。
SASSAS の運営は寄付に頼っている為にしばしば基金を募る催しが行われ、このコンサートもその一環だった。

9 ケ月前に No Fun Festival に登場したスメグマはこのコンサートに参加したが、Dr. id の姿はそこには無かった。
メンバーはジュ・スクとジャッキーを核にエースとデニスそしてトムという、新生スメグマを構成する方々だった。
さらに、意外にも "Dr. Octopus" で協働したシャーキフェイスとローチフィレの姿がそこに在ったのである。
果たして、既にこの時点において Dr. id が正式にスメグマを脱退していたのかどうかは定かで無い。
少なくとも、このスメグマをポートランド・ベースのユニットと呼ぶことは躊躇されただろうと想う。

さて、2007 年の 5 月にジュ・スクとジャッキーは再び No Fun Festival への参加を果たす。
この時彼らに合流したのが、ロドニー・フォレストでのパートナーとなるトム・レッシオンであった。
当時はまだジュ・スク - オブリヴィア - トムのトリオを名乗っていて、ユニット名を冠してはいない。
実を言えばこれが彼らにとって初めてのトリオ演奏では無く、前年の 2006 年に録音を行っていた。
その結果が 4 トラックにまとめられ、No Fun Festival の後にイタリアの QBICO からLP として出版される。
この LP のコンテンツはとても評判を呼んだのだが、200 枚の限定だったので瞬く間に完売となった。
良いアルバムであり再発が望まれていたので、今般 CD-R の形で再発されたのである。

ジュ・スクとジャッキーがテンセズを名乗り始めたのは 2008 年だから、その前の録音である。
テンセズを名乗る際に彼らは、スメグマの美学をよりタイトに純化するスタンスを堅持して見せる。
だが、テンセズを名乗らないケースにおいて彼らは再現の無い自由の中に飛び込んで行くのである。
例えば、ジョン・ウィーズとの協働シングル "Inside and Out" (2008 年) においてもその姿勢が顕著だった。
その情況においては、協働相手と彼らの間には奔放な化学反応が連鎖的に起こって行く。
ロドニー・フォレストにおいては、連鎖する化学反応の相手方がトム・レッシオンなのだ。

特徴として、このアルバムに収録されている各トラックにおいては何れかのメンバーがフィーチャーされている。
トラック 1 がトムを前面に押し出したものであり、トラック 2 においては代わってジュ・スクが軸を成す。
そしてトラック 3 は、オブリヴィアことジャッキーが紡ぎ出す音を中心に情況が進んで行く。
トラック 4 では再びジュ・スク主導の展開が為され、アルバムは閉幕へと向かう。

スメグマは基本的に、集合的即興による或る意味では匿名仕様での雑食音楽共同体の体裁を成している。
テンセズもデュオでこそあるが、等価な立場に在る演奏者のコール・アンド・レスポンスが基盤なのだ。
特定のメンバーを軸とする演奏は、スメグマとテンセズにおいては多分例外的だと言えるだろう。
そこでは、メンバーの誰かが主導となるユル〜い制約の下に自由な即興を繰り広げられる。

なお、ロドニー・フォレストと言うユニット名称は彼らが住む場所から引用されたものだ。
ロドニーは、ジュ・スクとジャッキーがポートランドにおいて住んでいる住所である。
そして、トムがパサディナにおいて住んでいる住所はフォレストと呼ばれている。
彼らの日常からこの自由な音楽が発信されていることを表す、そんなネーミングかなとも想う。
日常と自由の共生を実践して来た彼らならではの、掛け替えの無い想いが込められているのかも知れない。

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